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価値発見に焦点化した振り返りワークショップの意義と、その教育学的分析

さくらインターネット研究所に8月から所属している朝倉です。
他の研究員とは研究分野が異なり、教育学(中でも臨床教育学)の研究をしています。
当研究所のチーム作りにおいて重要なポイントである「コラボレーション」について、上級研究員の坪内さん( @yuuk1t )による記事「リモートワークによる孤立から結束へと向かうチームビルディング」が公開されましたが、筆者はこの記事で取り上げられている「コラボ会」の振り返りを企画・実施しました。
本記事では、コラボ会振り返りワークショップの意義や、コラボレーションとの関係性について教育学的視点からご紹介します。

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リモートワークによる孤立から結束へと向かうチームビルディング

さくらインターネット研究所の坪内(@yuuk1t)です。最近は、大学院の博士課程が3年目の後半に入り、大詰めを迎えています。

さくらインターネット研究所では、研究所メンバーが地理的に分散して仕事していることと、研究所メンバーの専門性と参画プロジェクトが多様であることの2点を理由に、メンバー同士が物理的にも情報的にも孤立しやすい傾向にあります。孤立を避けるためには、特別な工夫が必要であると考え、メンバー間の結束を高め、よりよいコラボレーションを生むための施策をこの半年ほど取り組んできました。そこで、この記事では、コラボレーションを促進するための会をつくり、その会で独自に定義したコラボレーションの構造を表現する階層を提示し、その階層の基底部分の「同じ場にいる」と「互いを知る」ことに着目した施策を紹介します。これらの取り組みが、リモートワーク時代のチームビルディングの参考になれば幸いです。

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3次元メッシュに対する深層学習を用いた材料物性の予測についてJSAI2022で発表しました

さくらインターネット研究所の鶴田(@tsurubee3)です。2022年6月14〜17日に国立京都国際会館とオンラインのハイブリッドで開催された2022年度 人工知能学会全国大会(第36回)にて、「3次元メッシュで表現した結晶構造を用いた材料物性の予測に向けた深層学習モデルの設計」と題した研究について発表しました。これは、マテリアルズ・インフォマティクスという材料科学と情報科学が融合した分野の研究であり、機械学習を専門とする鶴田と材料科学を専門とする桂先生、熊谷さん(@kumagallium)のコラボレーションにより生まれた研究です。
論文スライドも公開しておりますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

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「NEC x さくらインターネット データ流通実証実験 終了報告書」 公開

こんにちは、さくらインターネット研究所の菊地です。

さくらインターネット研究所では、NECと共同で4年にわたりFIWARE基盤を利用したデータ流通実証実験を実施してきました。この度、実証実験終了にあたり終了報告書をまとめましたので公開いたします。

実証実験終了報告書では、実証実験の狙い、4年間の実績(構築したシステム、可視化事例、規約、登録データ等)、実証実験を通じて得られた知見等をまとめております。スマートシティやデータ流通、その実現手段であるFIWARE等についてご興味・ご関心をお持ちの方はぜひご一読いただければと思います。

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更なる実践的な研究開発を目指して研究開発エンジニア2名をお迎えしました

まつもとりーです。さくらインターネット研究所では、各研究員が自由に研究をおこないつつも、ひとつの研究所全体のミッションとして、会社、あるいは、業界において今後数年先に必要とされる技術やプロダクトを、ある種の斥候チームとして調査したり研究したりしています

そのような背景の中、各研究員は専門領域の最新研究動向について調査しながら、その中で新しい研究を日々おこなっています。例えば、関連研究を大量に調査して課題を炙り出したり、研究の貢献を示すために沢山のコードを書いて評価したり、その成果や研究のストーリーを論文として言語化したりしています。

一方で、斥候チームとしてのミッションからした時に、そのような調査結果や研究成果を更に使いやすいようにする、例えば、OSSのようなソフトウェアに落とし込んでフィードバックの中からエンジニアがより使いやすいソフトウェアになるように実装したり、今後必要とされるプロダクトをより良いものにするための体系的な知識に昇華したりしていきたいのですが、そういった実践面の取り組みについて、なかなか手が回らないという悩みがありました。それ程、論文というフレームワークを使いながら、研究の価値を示していくことは大変な作業ではあります。

しかし、その価値をソフトウェアとしてエンジニアが当たり前に使ったり、体系的な知識として参考にしたりするような実践的な領域にまで引き上げられないまま、論文やPoCの実装としてのみ残されていくのは大きな損失であると感じていました。

そこで、さくらインターネット研究所では新たに研究開発エンジニアというポジションを設け、研究員が新しい研究として価値を示しつつも、その価値がエンジニアやプロダクト開発の助けとなるような実践的な領域に、研究者と研究開発エンジニアの両輪で引き上げていくための取り組みを開始しました。

そのために、まずは研究開発エンジニアとして2名をお迎えして、引き続きさくらインターネット研究所の研究開発成果やその為に調査して整理した最新の知見を、研究員と研究開発エンジニアの両方向からさらにブラッシュアップし、さくらインターネット、ひいては、業界全体に実践面からも貢献できるように取り組んで参ります。

そこで、本エントリでは、2022年2月からさくらインターネット研究所に配属された2名に自己紹介とこれからの取り組みを簡単に紹介してもらいます。

自己紹介 (田村)

はじめまして、さくらインターネットの田村です。2019年11月に入社して以来、主に新しいプロダクトの開発を行う部署の中で、基盤環境の整備やサービス開発を担当してきました。技術面ではKubernetesや、その周辺に触れることが多く、これまでに行ってきた具体的な取り組みとしては、Cluster APIを利用したカスタムコントローラーの開発などが挙げられます。

今回、さくらインターネット研究所の研究開発エンジニアとして、ソフトウェア開発や調査をはじめとする様々な取り組みに携わっていくことになりました。これまでの経歴の中では、顧客向けのシステム開発や、Webサービスの開発などが主な業務でしたので、少し毛色の異なる環境に身を置くことになります。とはいえ、今までに得た経験を活かせるところもあるかと思いますので、研究から生じる成果がより良いものになるように、研究員の皆様と協力して取り組んで参りたいと思います。

自己紹介 (野田)

はじめまして、さくらインターネットの野田( @sonod00 )です。
2月1日よりさくらインターネット研究所に研究開発エンジニアとしてジョインしました。
これまでは社内で新規プロダクトのマネージメントや開発を行っておりました。
この新規プロダクトをやるまでは別の企業でホスティング関係のインフラエンジニアをやっておりました。
新規のプロダクトを作って行く中で、プロダクトマネジメントやUXデザインの大事さとプロダクトマネージャー以外の職種もプロダクトについて知ることでよりよいプロダクト作りができると感じました。
自分自身、エンジニアをしていた頃はこんなことを考えることはほとんどありませんでした。
しかし、プロダクトに関する知識は、専門的なことも多く何から学ぶべきかわからない部分が多々あります。
そういったプロダクトマネジメントやUXデザインを一般化したりエンジニアとして汎用化していきたいと考えています。
また、今後来るであろうプロダクトを調査したり、タイミングによっては新規プロダクト開発もやっていきたいと考えています。
これから様々な形でプロダクトに関わって行ったり思っておりますので、よろしくお願いします。

チームの絆を深めるための総当り1on1の実施と1on1のときに気をつけていること

さくらインターネット研究所のまつもとりーです。

まずいきなりですが、最初にタイトルにあるように1on1と書いていますが、一般的に1on1というと、1on1をする側とされる側のようなイメージがあるようにも感じています。ですので、ここでいう1on1はあくまでお話する二人が対等でありたいという意図を込めて、研究所では例えば「研究相談会」などとして、する・されるのような立場があまりないようにしています。

いきなり脱線しましたが、ここから本題です。コロナ禍や日常的なリモートワークの影響の中、チームや組織でのコミュニケーションをどう改善するかという取り組みが各社沢山されてきていると思います。さくらインターネット研究所でも、夕方にみんなで集まって雑談したり、もくもく作業をするもくもく会をしたり、定期的な所謂1on1を設定したり、コロナの状況が一時改善したときは、たまにオフィスに集まってリアルにコミュニケーションをとったりしてきました。

また、チームの中でモチベーションが上がらない場合、自分の制御下で会話の場に入らず、コミュニケーションをとらない選択を簡単にできることから、どんどん気持ちが乗らない状況に陥っていくこともあります。そういった状況を避けるために、自分やメンバー間でそういう雰囲気を感じたら、それぞれが任意で会話をしたりしながら、チームのモチベーションを維持してきました。

一方で、それらの取り組みでなかなか改善できていなかった課題を整理してみると、

  1. オープンな場では話にくいような悩みについて相談しにくい
  2. 同僚、あるいは、ある種の仲間として、対等に信頼関係のあるなかでクローズドにざっくばらんに話ができない
  3. 1や2の話は自分の問題であるように矮小化して考えることがあり、同僚に気を使って誘いにくい

といったような状況がありえます。特に、3のような状況が複数のメンバーで生じた場合、任意に気づいた人が声をかけるといったことも起きにくくなり、チーム全体として少しずつストレスを抱え、弱まっていってしましいます。相談や悩みというのは、何でも上司と話たいわけではなく、当然同じ目線や同じ立場で話がしたいこともあるからです。

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Linux eBPFトレーシングのツール実装に必要な知識の体系化と動機

さくらインターネット研究所の坪内(@yuuk1t)です。

昨年末に、個人ブログで公開したLinux eBPFトレーシング技術を体系化して整理した記事を、研究成果の一環として紹介します。

Linuxカーネルの拡張技術であるeBPF(extended Berkley Packet Filter)の普及により、ユーザー定義のコードにより、カーネル内部の関数呼び出しなどのイベントを追跡し計測しやすくなりました。この記事では、eBPFとはなにか、トレーシングにおけるeBPFの位置付け、eBPFトレーシングの技術要素(アーキテクチャ、イベントソース、BCC、bpftrace、CO-RE)、1992年の起源から2021年に至るまでの歴史、eBPFトレーシングツールをプログラミングする方法をまとめました。

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