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SAKURA Internet Inc.

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大規模言語モデルによるシステム障害の診断技術に関する研究動向

さくらインターネット研究所の坪内(@yuuk1t)です。

私の個人ブログにて、クラウドのプラットフォームやクラウド上に展開されるアプリケーションの障害を大規模言語モデル(LLM)を用いて、自動で診断するための技術を提案する最新の研究動向を紹介する次の調査記事を書きました。

LLM for SRE“の世界探索 – ゆううきブログ

本記事では、この研究動向の調査をさくらインターネット研究所の研究活動の一環として位置づけ、調査の概要と動機、公開後に得られたフィードバック、今後の研究について紹介します。

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クラウドの障害診断の自動化に関する論文が国際ジャーナル「IEEE Access」に採録

さくらインターネット研究所の坪内(@yuuk1t)です。

2024年3月に、さくらインターネット研究所から投稿した学術論文が、アメリカ合衆国に本部を置く電気・情報工学分野の学術研究団体(学会)、技術標準化機関であるIEEEの、査読付き国際オープンアクセスジャーナル「IEEE Access」に採録・掲載されました。掲載された論文の情報は次の通りです。

さくらインターネット研究所では、以前より、機械学習や統計解析技術を用いて、クラウドのシステム障害管理(インシデント管理とも呼ばれる)を自動化する研究を行ってきました。障害管理は、主にクラウドを用いたオンラインサービスの信頼性に着目するソフトウェア工学分野「SRE(Site Reliability Engineering)」が取り扱う重要課題です。

障害管理の自動化に関する我々の研究活動の中で、国際的な学術機関の媒体に掲載された論文は、本論文が初となります。以降では、本論文の概要を紹介します。

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3次元結晶構造に基づく材料の物性予測についてICMLA2023で発表しました

さくらインターネット研究所の鶴田(@tsurubee3)です。2023年12月15〜17日にアメリカ合衆国フロリダ州ジャクソンビルで開催された22nd International Conference on Machine Learning and Applications (ICMLA 2023)にて、「DeepCrysTet: A Deep Learning Approach Using Tetrahedral Mesh for Predicting Properties of Crystalline Materials」と題した研究について発表しました。
この研究は、マテリアルズ・インフォマティクスと呼ばれる材料科学と情報科学の融合分野における研究です。これまでさくらインターネット研究所では、ITインフラが主な研究開発の対象分野でしたが、最近では、大学や企業と連携しながら材料科学や創薬などの自然科学分野の研究開発にも積極的に取り組んでいます。今回の研究発表は、以前のプレスリリースでもご紹介した京都大学複合原子力科学研究所と共同で取り組んだ成果です。

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3次元メッシュに対する深層学習を用いた材料物性の予測についてJSAI2022で発表しました

さくらインターネット研究所の鶴田(@tsurubee3)です。2022年6月14〜17日に国立京都国際会館とオンラインのハイブリッドで開催された2022年度 人工知能学会全国大会(第36回)にて、「3次元メッシュで表現した結晶構造を用いた材料物性の予測に向けた深層学習モデルの設計」と題した研究について発表しました。これは、マテリアルズ・インフォマティクスという材料科学と情報科学が融合した分野の研究であり、機械学習を専門とする鶴田と材料科学を専門とする桂先生、熊谷さん(@kumagallium)のコラボレーションにより生まれた研究です。
論文スライドも公開しておりますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

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「NEC x さくらインターネット データ流通実証実験 終了報告書」 公開

こんにちは、さくらインターネット研究所の菊地です。

さくらインターネット研究所では、NECと共同で4年にわたりFIWARE基盤を利用したデータ流通実証実験を実施してきました。この度、実証実験終了にあたり終了報告書をまとめましたので公開いたします。

実証実験終了報告書では、実証実験の狙い、4年間の実績(構築したシステム、可視化事例、規約、登録データ等)、実証実験を通じて得られた知見等をまとめております。スマートシティやデータ流通、その実現手段であるFIWARE等についてご興味・ご関心をお持ちの方はぜひご一読いただければと思います。

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Linux eBPFトレーシングのツール実装に必要な知識の体系化と動機

さくらインターネット研究所の坪内(@yuuk1t)です。

昨年末に、個人ブログで公開したLinux eBPFトレーシング技術を体系化して整理した記事を、研究成果の一環として紹介します。

Linuxカーネルの拡張技術であるeBPF(extended Berkley Packet Filter)の普及により、ユーザー定義のコードにより、カーネル内部の関数呼び出しなどのイベントを追跡し計測しやすくなりました。この記事では、eBPFとはなにか、トレーシングにおけるeBPFの位置付け、eBPFトレーシングの技術要素(アーキテクチャ、イベントソース、BCC、bpftrace、CO-RE)、1992年の起源から2021年に至るまでの歴史、eBPFトレーシングツールをプログラミングする方法をまとめました。

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情報処理学会論文誌 デジタルプラクティスにSSHプロキシサーバに関する推薦論文が掲載されました

2021年10月発行の情報処理学会論文誌 デジタルプラクティス (Vol.2 No.4) に弊研究所の鶴田博文(@tsurubee3)と松本亮介(@matsumotory)が執筆した推薦論文が掲載されました。

論文はこちらで閲覧できます。

以下、著者により論文の内容を紹介します。

推薦論文:ユーザに変更を要求せずにシステム変化に追従可能なSSHプロキシサーバsshrの開発

第一著者の鶴田です。本論文は、2019年の藤村記念ベストプラクティス賞を授賞し、情報処理学会インターネットと運用技術(IOT)研究会からの推薦を受けて、デジタルプラクティスに推薦論文として掲載されました。

本論文では、サーバ管理に広く利用されているSSHにおいて、ユーザがサーバの構成やその変更を意識することなく透過的に目的のサーバにSSH接続ができる仕組みを実現するために、sshrというプロキシサーバを提案しました。sshrは、SSHプロキシサーバに対してシステム管理者が自由にフック関数を実装、組み込み可能なアーキテクチャを採用しており、これによりプロキシサーバの動作をプログラマブルに拡張することができます。sshrは第12回インターネットと運用技術シンポジウム(IOTS2019)にて提案を行いました。今回の論文は、デジタルプラクティスの趣旨に沿うように、より実践的な内容について書いています。具体的には、sshrをシステムに適用する際のシステム構成やフック関数の実装などを例を挙げながら詳しく説明しています。非常に実践的な内容になっているので、ご興味のある方はぜひ論文を読んでいただけますと幸いです。また、提案したsshrのコードはGitHubで公開しているので、IssueやPull requestなども大歓迎です。


共著のまつもとりーです。この研究は、鶴田さん(以降つるべーさん)がさくらインターネット研究所に入ってまず最初に論文化に取り組んだ研究です。当時は、このようなエンジニアとしての活動から生まれたプロダクトをどのように研究へと昇華させ、そのプロダクトの良さをブラッシュアップしながらも、エンジニアとしてある意味では直感的に良いと思った実装を研究に落とし込む最初の取り組みでした。

つるべーさんも、言語化をする中で、このプロダクトの価値ってなんだろうか?他と比べた良さってなんなのだろう?実際にプロダクションで今までになく便利に使えているのだからそこに良さはあるはず、とお互い信じて取り組んできました。時には論文化を諦めそうになることもありましたが、お互いに改めて議論しながら、研究報告や査読付きのシンポジウム、国際会議などを通じて、デジタルプラクティに採録されるほどの実践的な研究として昇華することができました。

この取り組みから、改めて自分自身も、エンジニアが課題に直面したときに作り上げるプロダクトは必ずこれまでにない価値や意義があり、それを言語化することでその価値を論文として永続化させ、さらにそのプロダクト自身の質を、自分たち、あるいは、後世の研究者やエンジニアと共に継続的に高めていけることを改めて確信しました。これがあって、つるべーさんも、引き続き素晴らしい研究開発を行っているため、我々にとってはとても思い入れのある論文となりましたので、ぜひ一度目を通して頂けると幸いです。

謝辞

本研究で提案したsshrの開発を進めるにあたり、多大なるご支援とご助言を賜りましたGMOペパボ株式会社のホスティング事業部の皆様をはじめ多くの方々に厚く感謝を申し上げます。