こんにちは、さくらインターネット研究所の菊地です。
2019/11/27(水)〜2019/11/29(金)に開催されたITRC Meet46にて、「プラットフォーム事業者としての今後のエッジコンピューティングのあり方について」というタイトルでパネルディスカッション(エッジコンピューティング環境を考慮した次世代IoTプラットフォームに関するパネル)に登壇してきました。
簡単な内容説明
我々さくらインターネット研究所は、「超個体型データセンター」コンセプトを提唱し、その実現に向けて様々な研究開発を実施しています。エッジコンピューティングはその超個体データセンターを、特にネットワークの部分から捉えたものとも言えるものです。(超個体型データセンターコンセプトでは、エッジ領域、クラウド領域組み合わせて生活に溶け込むコンピューティングリソースを提供/実現する、というビジョンを示しています。)
パネルでは、さくらインターネット研究所(菊地)が考えるエッジコンピューティングの研究開発プランを提示しました(後述)が、加えて、そのプランを考えるにあたりバズワード的な広がりを見せているエッジコンピューティングを分類整理するための2つの分類軸を規定しました。それが以下になります。
エッジコンピューティングの分類軸1:領域での分類
一つは「領域」による分類です。エッジコンピューティングは、その本質であるユーザの近傍にコンピューティングリソースを置くことの実現のために、メディア(アクセスネットワーク)が必ず必要です。このアクセスネットワークとの関係性からエッジコンピューティングを3つに分類しています。「MEC型」「IIC型(OT発展型)」「クラウド延伸型」です。
エッジコンピューティングの分類軸2:機能による分類
もう一つの分類は「機能」によるものです。どこまでのフレキシビリティ(システム構成変更の自由度)を実現するかによってレベル1〜レベル5までに分類しています。これは(ちょっと分野が変わりますが)自動運転において「自動運転レベル」を定義することで議論の見通しがよくなったことにならい、同じような効果をエッジコンピューティングにも導入できないかと思い定義してみたものです。レベル1,2はノードの移動、レベル3はスケールアウト、レベル4はスケールアップ、レベル5はロジック組み換え、となっています。
この2つの分類軸を組み合わせることで、エッジコンピューティングを「どこまでの広がりを持って、どのような機能を実現できるか(するか)」定義できるようになります。この整理をもとに、さくらインターネット研究所としてどのようにエッジコンピューティングを実現していくか、考えてみました。
エッジコンピューティング研究開発プラン
プランは3段階考えてみました。松竹梅ですね。
松は「クラウド延伸型+MEC型」でレベル5を目指します。エッジコンピューティングの王道とも言えるものです。エッジとクラウドをシームレスに使える環境を作ります。そこでは、屋外でも屋内でも同じようなコンピューティングの恩恵を受けられるようになります。エッジ領域は必ずしも屋外環境ということではありませんが、MEC型=携帯キャリアの基地局などにコンピューティングリソースを設置する、ということから屋外でのコンピューティングがフォーカスに入ってきます。
竹は「クラウド延伸型」のレベル3です。クラウドを自営領域に広げていくというものです。Google AnthosやAzure Stackなどに近いものになります。ただしレベル3ですので、IaaSとしての見え方が残ります(ユーザはVMを意識する)。
梅は「IIC/OT発展型」のレベル0です。ユーザがエッジ領域にコンピューティングリソースを置いていくことを支援し、さくらのクラウドにつなぎやすくします。(Raspberry Piなど向け)パッケージを用意したり(Amazon FreeRTOSがそれに近いイメージ)、API/データモデルレベルでの相互接続性実現を推進していくというものです。かつて、大学の研究室のLANを徐々につないでいってそれが大きなネットワーク(Internet)に育っていったような経緯を意識しています。
これらは、必ずしもレベルが高いほどよいというわけではありません。エッジ領域のコンピューティングリソース(とクラウドのリソース)を使ってやりたいことを実現するのに最適なものを選ぶことが重要と考えます。
また、これらはあくまで研究所として想定する研究開発プランであって、さくらインターネットとしての事業計画ではありません(それを考え、実施することは研究所の担う役割から外れます)。バラ色の計画を示していますが、これらはすぐ実現できるようなものではなく、実際にはたくさんの技術を研究・開発していかなければなりません。(例えば、エッジとクラウドを跨ったスケールアウトを実現するときに、ストレージはエッジではどの様に見えたら良いのでしょう?)
まずはコンセプトから1段階ブレイクダウンし、具体的に考えなければならないことを抽出する、そのためのプラン・検討なのです。
ということで、これをベースにさくらインターネット研究所は今後もエッジコンピューティング、超個体型データセンターの実現に向けて研究を進めてまいります。
詳細については資料(こちらからもダウンロード可)をぜひご覧ください。