研究領域

本ページでは、さくらインターネット研究所の研究領域を紹介します。私たちは現在、「コンピューティング・ネットワーク」、「データ・機械学習・人工知能(AI)」、「教育・社会・組織」の3領域に対して、研究活動を行っています。

コンピューティング・ネットワーク

コンピューティング・ネットワーク

コンピューティング・ネットワーク領域では、さくらインターネットが注力するクラウド・コンピューティングの未来を形作る技術の研究開発に取り組んでいます。本領域における主要なトピックは、「システムプラットフォーム」「システム要素技術」「システムエンジニアリング」の3カテゴリに分類されます。

  • システムプラットフォーム
    • クラウドコンピューティング
    • エッジ・フォグコンピューティング
    • AIインフラ
    • 量子暗号通信
    • 高性能計算(ハイパフォーマンスコンピューティング)
  • システム要素技術
    • システムソフトウェア
    • WebAssembly
    • メール
    • ミドルウェア
  • システムエンジニアリング
    • SRE(Site Reliability Engineering)

トピック概要

システムプラットフォームは、ハードウェア・ソフトウェアの要素技術が一つのシステムとして構成され、多様なアプリケーションを展開するためのプラットフォームとして定義しています。クラウドコンピューティングを基盤として、エッジ・フォグコンピューティングへの拡張を進め、データ処理の分散化と効率化に挑戦しています。量子暗号通信の研究では、次世代のセキュアな通信基盤の構築を目指し、高性能計算(HPC)の研究では、生命情報の解析などの複雑な科学計算の高速化を実現します。また、AIインフラの構築と最適化に注力し、大規模言語モデルの分散学習などの大規模ワークロードに特化した計算リソースを効率的に提供します。

システム要素技術は、システムプラットフォームを構成するための基礎となる要素技術です。システムソフトウェアの研究では、多様なエッジ・フォグコンピューティング環境におけるWebAssemblyを用いた効率的なライブマイグレーションに取り組んでいます。また、伝統的な情報通信の基盤であるメールシステムを、クラウド時代に適したアーキテクチャへと刷新します。

システムエンジニアリングは、社会の現実的な制約を考慮しながらシステムを開発・運用し、利用者に対して快適なサービスを提供するためのエンジニアリングです。SRE(Site Reliability Engineering)の研究では、クラウドやAIインフラからテレメトリーデータを効率的に収集・保存・分析するための技術を開発しています。

研究のゴール

これらの未来を見据えた先端研究から実システムを対象とした実用研究を通じて、クラウドを中心とする計算・情報通信技術の発展に貢献します。

メンバー

  • linyows
  • Shunsuke KIKUCHI
  • chikuwait
  • sh-suzuki(await)
  • Fumikazu KONISHI
  • yuuk1
  • Masaya Aoyama
  • Naoto MATSUMOTO
  • matsumotory

注目領域

  • 量子コンピューティング
  • バイオインフォマティクス
  • DNA・有機コンピューティング/ストレージ
データ・機械学習・人工知能(AI)

データ・機械学習・人工知能(AI)

データ・機械学習・人工知能(AI)領域では、コンピューティングプラットフォーム上で取り扱われるデータの記録・管理・流通と、データを基に機械学習・AI技術を用いた複雑な構造の理解や多様なシステムタスクの自動化に取り組んでいます。本領域の主要な研究トピックは次のようなものです。

  • データ流通
  • ラボ・インフォマティクス
  • HPC向けデータライフサイクルデザイン
  • AI for Science
    • マテリアルズ・インフォマティクス
    • AI創薬
  • AI for 「コンピューティング・ネットワーク」

トピック概要

データ流通の研究では、スマートシティの実現に向けて、様々な組織や環境がもつデータを相互に組み合わせ、新たな価値を生み出すための実証実験を行っています。ラボ・インフォマティクスでは、研究データの管理・分析・共有を効率化し、科学的発見のプロセスを加速させる電子実験ノートプラットフォームの開発に取り組んでいます。HPC向けデータライフサイクルデザインは、HPCに求められるデータ作成・保存・利用・移動・同期・修正・共有・長期保管・破棄の効率性と持続可能性を向上させる研究です。

AI for Scienceの研究では、科学的発見のプロセスを加速するAI技術の開発に注力し、複雑な自然現象の理解や新たな知見の獲得を目指しています。具体的には、マテリアルズ・インフォマティクス分野では、科学論文などの専門文書から材料の合成手順や物性を自動的に抽出・構造化する研究に取り組んでいます。AI創薬分野では、新薬開発の効率化と高精度化を目的に、抗体のアミノ酸配列データを学習させた抗体言語モデルの研究を進めています。

AI for コンピューティングは、一般にはAIOpsとも呼ばれ、テレメトリーデータに対して機械学習・AI技術を適用し、計算資源の自動最適化・自動制御およびシステム障害対応の自動化を追求します。

研究のゴール

これらの学術研究、実証研究、および社会実装を通じて、コンピューティングプラットフォーム上のデータとAIがもたらす社会的・科学的価値の向上を目指しています。

メンバー

  • Hirofumi Tsuruta
  • Fumikazu KONISHI
  • yuuk1
  • Shunsuke KIKUCHI
  • m-kumagai🐻
教育・社会・組織

教育・社会・組織

教育・社会・組織領域では、デジタル社会に根ざした教育学や、研究開発組織のマネジメントに関する研究に取り組んでいます。本領域では、次の3つの研究トピックがあります。

  • 教育学
  • 研究組織開発
  • さくらインターネット博物館

トピック概要

教育学の研究は、教育方法の土台となる学習理論をデジタルやAIによって変化した社会を前提としたものに変革するための臨床研究に取り組んでいます。社会に開かれた教育課程という学校教育の理念をどのように実現していくのかについて、Y.エンゲストロームが提唱する拡張的学習理論などを軸に形成的介入研究によって学校の変革を目指すものです。

研究組織開発の研究は、地理的に分散した専門性の高い社員が非同期かつ裁量ある働き方をする中で、個人の成長とチームの信頼関係を両立させ、適切な評価と組織成果の向上を目指すものです。

さくらインターネット博物館は、同社の歴史と日本のインターネット・データセンターサービスの発展を記録・保存し、多くの人が参照できるようにすることで、インターネットの将来の発展について考える基盤を提供することを目指しています。

研究のゴール

以上の研究を通じて、デジタル時代の教育理論の変革や地理的に分散した研究組織の効果的なマネジメントに取り組むとともに、インターネット発展の歴史を保存することで、テクノロジーと人間の関係性を深く理解し、より良い社会の構築に貢献することを目指しています。

メンバー

  • 朝倉 恵
  • m-kumagai🐻
  • matsumotory
  • Shunsuke KIKUCHI