ACM/IFIP Middlewareの併設ワークショップMid4ccでWasmのチェックポイント・レストアについて発表しました

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研究所の中田 (@chiku_wait)です。

2025年12月15日から19日にかけて、アメリカのナッシュビルで開催された国際会議26th ACM/IFIP International Middleware Conference(Middleware)の併設ワークショップ、3rd International Workshop on Middleware for the Computing Continuum (Mid4CC 25)で自身の研究について発表しました。

Middleware/mid4cc

Middlewareは、クラウド・エッジ・分散システムのためのミドルウェアや、ミドルウェアの設計・プログラミング原則・フォールトトレランスなどを対象としたミドルウェアに関する国際会議です。学術系国際会議の格付けであるCore Rankによると、A(上位14%)に位置づけられており、この分野における有力な難関国際会議といえます。

mid4ccは、Middlewareに併設されたワークショップであり、エッジやクラウドなど、異なる特性のコンピューティングプラットフォームをシームレスに連携させるためのミドルウェアを主に扱っています。

会場のヴァンダービルト大学に、世界中から100人程度の研究者が集まり、興味深い発表と活発な議論が行われました。

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発表内容

この研究は、Wasmランタイム間での効率的なチェックポイント・レストアにセルフホストWasmランタイム(WasmにコンパイルされたWasmランタイム)を活用するものです。Wasmランタイムには特性の異なる多様な実装があり、クラウドやエッジ、組み込みデバイスなど、それぞれの計算機環境の制約やユースケースに適したランタイムがあります。これらのランタイム間でチェックポイント・レストアが可能になると、ステートフルなアプリケーションのライブマイグレーションによるオフローディングやハンドオフが実現できます。一方、ランタイム間で実装や性能最適化手法が異なることで実行状態の互換性がなく、そのままではチェックポイント・レストアを実現できません。この研究では、軽量でコンパクトなセルフホストWasmランタイムをランタイム中立な内部実行状態表現として活用し、ランタイム中立なチェックポイント・レストアを実現しています。

論文:Self-Hosted WebAssembly Runtime for Runtime-Neutral Checkpoint/Restore in Edge-Cloud Continuum

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おわりに

難関国際会議の併設ワークショップということもあり、メインシンポジウムとワークショップ双方で非常に興味深い発表を聞くことができ、研究に関するモチベーションが更にアップしました。また、活発な質疑応答によって今後の研究のアイデアや改善の種を得られたので、研究をよりブラッシュアップさせ、一流国際会議やジャーナルに挑戦したいと思います。

著者

中田 裕貴
中田 裕貴
研究員

2022年4月新卒入社。クラウドコンピューティングやエッジコンピューティングのためのシステムソフトウェアに関する研究開発に従事。

学部・修士学生時代はシステム情報科学を専攻し、オペレーティングシステムや仮想化技術などのシステムソフトウェアや分散システムに関する研究に従事した。また、研究と並行して学内プライベートクラウドやオンライン会議サービス、BLEビーコンを活用したロケーションサービスなどの開発やプロダクトマネジメント、サービスデザインに従事した。

2024年4月より公立はこだて未来大学 大学院システム情報科学研究科 博士(後期)課程へ進学(社会人学生)。