ホーム » 論文
「論文」カテゴリーアーカイブ
言語モデルを用いたAI創薬:NeurIPS 2024採択論文の解説
さくらインターネット研究所の鶴田(@tsurubee3)です。先日、『さくらインターネットとCOGNANOのAI創薬に関する共同研究論文が、世界最高峰のAI国際会議「NeurIPS 2024」に採択』というニュースリリースを公開しました。このNeurIPS 2024に採択された論文(以下、「本論文」)は、ここ数年で急速に発展している言語モデルを創薬分野、特にタンパク質のアミノ酸配列に応用する研究です。このような研究は、Metaのようなビッグテックも活発に取り組んでおり、自然言語処理の分野で培われた技術が、自然言語の枠を超えて新薬候補の探索や設計に利用されつつあります。本記事では、本論文を中心に、言語モデルを活用した創薬の研究についてご紹介します。
[続きを読む]クラウドの障害診断の自動化に関する論文が国際ジャーナル「IEEE Access」に採録
さくらインターネット研究所の坪内(@yuuk1t)です。
2024年3月に、さくらインターネット研究所から投稿した学術論文が、アメリカ合衆国に本部を置く電気・情報工学分野の学術研究団体(学会)、技術標準化機関であるIEEEの、査読付き国際オープンアクセスジャーナル「IEEE Access」に採録・掲載されました。掲載された論文の情報は次の通りです。
- 書誌情報:Yuuki Tsubouchi, Hirofumi Tsuruta, MetricSifter: Feature Reduction of Multivariate Time Series Data for Efficient Fault Localization in Cloud Applications, IEEE Access (ACCESS) , Vol. 12, pp. 37398-37417, March 2024.
- 論文のファイル: https://ieeexplore.ieee.org/ielx7/6287639/6514899/10462133.pdf
- ソースコードとデータセットのリポジトリ: https://github.com/ai4sre/metricsifter
さくらインターネット研究所では、以前より、機械学習や統計解析技術を用いて、クラウドのシステム障害管理(インシデント管理とも呼ばれる)を自動化する研究を行ってきました。障害管理は、主にクラウドを用いたオンラインサービスの信頼性に着目するソフトウェア工学分野「SRE(Site Reliability Engineering)」が取り扱う重要課題です。
障害管理の自動化に関する我々の研究活動の中で、国際的な学術機関の媒体に掲載された論文は、本論文が初となります。以降では、本論文の概要を紹介します。
[続きを読む]情報処理学会論文誌 デジタルプラクティスにSSHプロキシサーバに関する推薦論文が掲載されました
2021年10月発行の情報処理学会論文誌 デジタルプラクティス (Vol.2 No.4) に弊研究所の鶴田博文(@tsurubee3)と松本亮介(@matsumotory)が執筆した推薦論文が掲載されました。
以下、著者により論文の内容を紹介します。
推薦論文:ユーザに変更を要求せずにシステム変化に追従可能なSSHプロキシサーバsshrの開発
第一著者の鶴田です。本論文は、2019年の藤村記念ベストプラクティス賞を授賞し、情報処理学会インターネットと運用技術(IOT)研究会からの推薦を受けて、デジタルプラクティスに推薦論文として掲載されました。
本論文では、サーバ管理に広く利用されているSSHにおいて、ユーザがサーバの構成やその変更を意識することなく透過的に目的のサーバにSSH接続ができる仕組みを実現するために、sshrというプロキシサーバを提案しました。sshrは、SSHプロキシサーバに対してシステム管理者が自由にフック関数を実装、組み込み可能なアーキテクチャを採用しており、これによりプロキシサーバの動作をプログラマブルに拡張することができます。sshrは第12回インターネットと運用技術シンポジウム(IOTS2019)にて提案を行いました。今回の論文は、デジタルプラクティスの趣旨に沿うように、より実践的な内容について書いています。具体的には、sshrをシステムに適用する際のシステム構成やフック関数の実装などを例を挙げながら詳しく説明しています。非常に実践的な内容になっているので、ご興味のある方はぜひ論文を読んでいただけますと幸いです。また、提案したsshrのコードはGitHubで公開しているので、IssueやPull requestなども大歓迎です。
共著のまつもとりーです。この研究は、鶴田さん(以降つるべーさん)がさくらインターネット研究所に入ってまず最初に論文化に取り組んだ研究です。当時は、このようなエンジニアとしての活動から生まれたプロダクトをどのように研究へと昇華させ、そのプロダクトの良さをブラッシュアップしながらも、エンジニアとしてある意味では直感的に良いと思った実装を研究に落とし込む最初の取り組みでした。
つるべーさんも、言語化をする中で、このプロダクトの価値ってなんだろうか?他と比べた良さってなんなのだろう?実際にプロダクションで今までになく便利に使えているのだからそこに良さはあるはず、とお互い信じて取り組んできました。時には論文化を諦めそうになることもありましたが、お互いに改めて議論しながら、研究報告や査読付きのシンポジウム、国際会議などを通じて、デジタルプラクティに採録されるほどの実践的な研究として昇華することができました。
この取り組みから、改めて自分自身も、エンジニアが課題に直面したときに作り上げるプロダクトは必ずこれまでにない価値や意義があり、それを言語化することでその価値を論文として永続化させ、さらにそのプロダクト自身の質を、自分たち、あるいは、後世の研究者やエンジニアと共に継続的に高めていけることを改めて確信しました。これがあって、つるべーさんも、引き続き素晴らしい研究開発を行っているため、我々にとってはとても思い入れのある論文となりましたので、ぜひ一度目を通して頂けると幸いです。
謝辞
本研究で提案したsshrの開発を進めるにあたり、多大なるご支援とご助言を賜りましたGMOペパボ株式会社のホスティング事業部の皆様をはじめ多くの方々に厚く感謝を申し上げます。