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第45回インターネットと運用技術研究会で超個体型データセンターにおける分散協調クエリキャッシングについて発表しました

さくらインターネット研究所の坪内(@yuuk1t)です。5月23日から24日の2日間に渡り、大阪大学 豊中キャンパスにて開催された第45回インターネットと運用技術研究会にて、さくらインターネット研究所から1件の発表を行いましたので、論文とスライドと共に内容を紹介します。

超個体型データセンターを目指した分散協調クエリキャッシングの構想

坪内による発表です。本発表では、研究所のコンセプトである超個体型データセンターを実現するためのデータベース基盤のうちの一つを構想しました。

研究所のビジョンである超個体型データセンターを実現する上で、異なる規模、異なる位置に存在するデータセンターをアプリケーション開発者が直接扱うことは困難です。そこで、分散したデータセンター上で高速かつ透過的にデータを読み書きする基盤が必要となってきます。

本研究では、まず、動的に生成されるコンテンツ配信アプリケーションを対象に、読み込み性能を向上することを目標とします。読み込み性能向上のために,各分散データセンター上にキャッシュの複製を配置し、既存のアプリケーションを変更しなくて済むように、オリジンのデータと各キャッシュ間のデータの一貫性を強くする必要があります。しかし、書き込み時に同期的に各キャッシュを更新すると、ネットワーク遅延の大きいデータセンターへの同期処理の遅延に律速されるという課題があります。この課題を解決するために、我々は、(1)同期更新の範囲をネットワーク遅延に応じて調節可能とした上で,(2)アプリケーションの読み書き回数の比率を同期更新の範囲を適応的に決定可能にする手法を提案しました。

本手法では、アプリケーション単位でアプリケーション単位で適応的に性能調整が可能なため、大量のアプリケーションを抱えるクラウド・ホスティング事業に適用しやすくなっています。また、複数のリージョンにWebサービスを展開する場合に,リージョン内で参照処理を完結可能となります。さらに、ネットワーク遅延の変化の検知するため,特定のデータセンターの故障時に,自動でサービスアウト可能となります。最後に、各分散データセンター上で参照処理するため、負荷分散が可能となります。

研究会予稿

スライド

まとめ

今回の発表では、私が入社以来の初の研究発表となりました。構想段階ということもあって、発表後には活発に質問をいただき、今後実装と評価を進めていく中で、提案の信頼性を高めるためにどこに重点を置けばよいかということが以前より明らかになりました。

余談ですが、今月から情報処理学会インターネットと運用技術研究会の運営委員に就任しました。今後は、査読や研究会の座長などアカデミアの学会での活動を積極的に行っていく予定です。