さくらインターネット研究所に未踏プロダクトグループと研究開発グループを創設しました

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こんにちは、主席研究員のまつもとりーです。

ここ2年間は、自分の研究を進めるのではなく、よりチームとしての成果を最大化するために、研究所の活動の意味づけをしたり組織設計を見直し働く環境や制度の整備、チームビルディングを行いながら研究所の文化醸成にも取り組んできました。2年前に様々な設計と組織への適用を行い、1年以上その取り組みを実際に実践しながら、フィードバックを受けながらブラッシュアップを行ってきました。その結果として、研究所も人が多くなってきましたし、今後も更に増えていくことが想定されます。また、取り組みの専門性も少しずつグルーピング化されてきており、常に全体で活動するのは難しくなってきました。

これまで、研究所や自分を含めて「研究開発とプロダクト開発の両輪を回すことで、相乗効果により成果のインパクトを高めていきたい」という考えで行動してきましたが、それを実際に行うためには、個人個人でそういう活動をするだけでは不十分で、組織として、制度として、そして、文化としてその考えが組織に根付いている必要があります。そのための各種取り組みが2年の実践を経て機能し始めましたので、次のステップとして、全体としての文化や雰囲気はそのままに、よりメンバー間の議論が活発に行われ、深い議論ができ、チーム内での信頼関係が深まるように、グループ化を実施しました。

それぞれ、新たに創設した「未踏プロダクトグループ」と「研究開発グループ」の目的は以下の通りです。自分たちチームが社会に対してなすべきことは何か、そのなすべき事を達成するために自分たちがどのような存在にならないといけないのか、そのために何を意識して行動するべきなのかをチームで認識を合わせ、同じ方向に進んでいくために、各チームで度重なる議論を重ねました。議論のベースにはドラッカーのMVVを採用しています。

未踏プロダクトグループの目的

  • ミッション
    • 革新的な創造で感動を世界に
  • ビジョン
    • 新しい価値を生み出す人と共創し続ける
  • バリュー
    • 自らの判断基準を追求し

      社会やチームの”判断基準”を理解した上で、鵜呑みにすることなく誠実に物事を捉え、時には社会やチームの当たり前を問いただせるように、各メンバーが自らの”判断基準”を追求します。

    • 周りへの尊敬の心を持ち

      我々のサービスを利用してくださるユーザー、自身を支えてくれるチームメンバーや同僚、家族に対して、常に共感や尊敬、信頼の心を持ちます。

    • 積極的な対話を心がけ

      自身の考えや思いは、第三者に伝わるような言語化や図式化、態度で積極的に対話していきます。

    • 熱量を持ったモノづくりをする

      熱量は、共鳴し、伝播し、世界を動かせると信じて取り組みます。

研究開発グループの目的

  • ミッション
    • ネットワークと計算能力による、人類の知識・知恵・文化のさらなる探求・進歩

      コンピュータネットワークのみならず、生態系、道路網、また人や組織間の関係など、世の中のあらゆるものはネットワークによって相互作用などの関係性や構造を表すことができます。ネットワークによって個々を結ぶことで、それらが持つ知識は共有され、それは群の知恵となり、いずれ文化として定着していきます。そして、あらゆるネットワークは、人間の脳情報処理や計算機など、多様な計算能力を持ったノードやその活用による集団的知性によって進化的変質を続け、自然環境や社会環境に合わせて変化していきます。我々は、計算能力の活用と、それによるネットワークの進化的形成によって、人類の知識・知恵・文化のさらなる探求と、進歩し続ける世界の実現を目指しています。

  • ビジョン
    • インターネットと計算機によるデジタル社会の可能性を追求し続けるパイオニア

      インターネット・計算機技術とその応用に関する研究は秒進分歩で進んでおり、未来を正確に見通すことができません。我々は、流行や成功に囚われずに多様性のある研究開発を行うことで、デジタル社会のあらゆる可能性と選択肢を探求するパイオニアであり続けます。

  • バリュー
    • 3つの視点から、社会にとって有意義で創造的な成果を追い求めます
      • Communication:人と人、情報と情報のつながりによる多様な視点によって分野横断を可能にする知力
      • Curiosity:遊びと好奇心、熱中から生まれる発見力
      • Team:仲間への信頼と貢献への意欲から生まれる協働力と主導力

さいごに

このように、今さくらインターネット研究所は、新しいフェーズにさしかかっています。優れたエンジニアや研究者が集まり、そこから生まれる個人の成果だけが研究所の成果を左右するのではなく、各個人の成果を相乗効果として最大化し、チームだからこそ生み出される大きな実績となっていく組織を目指しています。それが自ずと「研究開発とプロダクト開発の両輪を回すことで、相乗効果により成果のインパクトを高めていく」ことになると考えています。

ぜひ、今後の研究所の成果に期待していただきつつ、もちろん、まだまだ成果を出し続けていくためには人が足りていません。未踏プロダクト開発についても、今開発しているもので終わりではなく、それを成功体験に、更に様々な未踏プロダクトを創出していきます。すでに、新しいアイデアを出している人もいます。

研究開発についても、OSやシステムソフトウェアを専門とするちくわくんが、OS分野で非常に難関で、情報処理学会のOS研究会でも凱旋公演を依頼されるようなAPsysと呼ばれるワークショップに主著論文が採択されたり、SREを専門とするゆううきさんが非常に採択率の低かったSRE NEXTに採択されて登壇したりしています。さらに、MLを専門とするつるべーさんが、兼業先でML領域最難関のトップカンファレンスであるNeurIPSに主著論文が採択されるというとてつもない成果を上げはじめており、そういったスキルを持つメンバーを中心に、いずれOSやSRE、MLなどのチームを作り、研究開発グループでもより大きな成果を上げる体制を作っていきたいと考えています。それらが、最終的に「研究開発とプロダクト開発の両輪を回すことで、相乗効果により成果のインパクトを高めていく」ことに繋がると信じています。

このそれぞれのチームに共感を頂いた場合は、いつか一緒に仕事をできることになるのを楽しみにしております。いつでも、まつもとりーまでご連絡ください。

著者

松本 亮介
松本 亮介
主席研究員京都大学博士(情報学)

さくらインターネット研究所上級研究員、ペパボ研究所客員研究員、Forkwell技術顧問、セキュリティ・キャンプ講師、情報処理学会各種委員。

2008年に現場の技術を知るため修士に行かずにホスティング系企業に就職したのち、2012年に異例の修士飛ばしで京都大学大学院の博士課程に入学。インターネット基盤技術の研究に取り組み、mod_mrubyやngx_mrubyなどのOSSを始めとした多数のOSSへの貢献や学術的成果を修める。

2015年4月より2018年10月までGMOペパボ株式会社にてチーフエンジニアとしてプロダクトのアーキテクトやエンジニア組織のマネージメントに従事すると同時に、ペパボ研究所では主席研究員としてOS・Middleware・HTTPに関する研究、及び、事業で実践できるレベルまで作りこむことを目標に研究に従事。

2018年11月より現職。

第9回日本OSS奨励賞や2014年度情報処理学会山下記念研究賞など、その他受賞多数。2016年に情報処理学会IPSJ-ONEにおいて時流に乗る日本の若手トップ研究者19名に選出される。